
「犬に論語、猫に小判、企業にモチベーション理論……
こんなの学ぶだけ無駄。」
ほとんどの人にとって、それは事実でしょう。
何故ならモチベーション理論は……
- 理解をするのが難しい為、学んだ本人が使いこなせない
- 理解が出来ても、自分達のビジネスや活動に応用出来ていない
事がほとんどだからです。
残念ながら、「知っているよ」というだけで、役に立たないのです。ですが、これらを学ぶ人が知りたいのは、ただの学問ではなく、“現実に使える知識”なはずです。
そこでこの記事では、それらの問題を解決する記事としました。
「今すぐ誰でも簡単に実践出来るモチベーション理論」です。
それは以下のようなものです。
- 理解が容易なもの:表や図を取り入れたり、難しい表現を避ける
- 超実践的:すぐに取り入れる事が出来る、豊富な行動案(記事の最後には、「モチベーション理論の実践、17のチェックリスト」も用意しました。)
ですので、いきなり彼らのモチベーション理論についての論文や著書を読むより、実際に役立つ内容となるでしょう。是非記事を実践して、人のパフォーマンスを最大限引き出すリーダーとなって下さい。
モチベーション理論を学ぶ上で心掛けたいこと
モチベーション理論に限らないのですが、何かを学習する時には「この知識は自分の行動にどう活かせるか?」を意識しておくとより効果的です。
モチベーションで言えば、まず考えるべきなのが
- 自分のモチベーションをアップさせたいのか?
- 他人のモチベーションをアップさせたいのか?
そのどちらのニーズを持っているのかを自覚する事です。
今回の記事では、後者を紹介していきます。つまり、人を引っ張るリーダー向けの記事となります。
また、あなたが
- 会社の経営者なのか?
- 人事部なのか?
- 部長や課長などのマネージャークラスなのか?
によっても、必要とされる情報は変わります。例えばモチベーション管理の為の施策が、「賃金のシステムを変える」等であれば、経営者層でなければ実践は出来ないでしょう。
この点については、少し幅を持たせて、様々な視点から書いています。ですので、自分の状況に適したものだけを取り入れるように心がけてもらえればと思います。
最後に、この記事では「会社員」を前提として書いていますが、書かれている知識は、「子育てをする親や教師、医療現場やスポーツトレーナー」といった人にも役だてられるでしょう。
この点に留意しながら記事を読み進めると、より記事の内容を活かせるはずです。
全てのモチベーション理論の概要
まずはこの記事の全体像を掴む為に、今回ご紹介する5つの理論の簡単な説明をします。以下に表で示したので、目次のような感覚でサラッと読んでもらえればと思います。
理論名 | 理論の要約 |
---|---|
マズローの 欲求5段階説 |
超有名なモチベーション理論。人間の欲求を五つの階層に分け、下位層から順番に満たしていく事により、モチベーションは引き出されるという理論。 |
マグレガーの X理論とY理論 |
「人は命令しないと働かないXさんか?」「人は自ら積極的に働くYさんか?」どちらの視点でマネージャーが捉えるかにより、モチベーションに影響を及ぼすという理論 |
ハーズバーグの 2要因理論 |
人のモチベーションを引き出す為には、動機付け要因(人として成長したい)と、衛生要因(不快を回避したい)の両方を満たす必要があるという理論 |
ロックの 目標設定理論 |
あるルールに従って設定した目標を受け入れた場合、人のパフォーマンスやモチベーションは向上するという理論。 |
デシの 認知的評価理論 |
モチベーションは自分の内側からくるのか?それとも外側からくるのか?という事を研究した理論。 |
もしかしたらご存知かとは思いますが、著名な
- マズローの欲求5段階説
- マグレガーのX理論、Y理論
- ハーズバーグの2要因理論
などは、取り上げさせていただきました。
ただ、上記の理論を知っているという人も「こんな風に活用すれば良かったのか!」と思ってもらえるような、行動案が豊富な内容としているので、是非お読み下さい。
また、これらの記事を書く上で、著名なドラッガーの「MBO(目標管理)」や「フロー理論」等も紹介していきます。ので、この記事を読めば基本的なモチベーション理論の大半は、学習出来るはずです。
それではここからは実際に、これらのモチベーション理論と、その具体的な活用方法についてご紹介していきます。
世界一有名なモチベーション理論:欲求5段階説
「世界で最も有名なモチベーション理論」といっても過言ではないのが、アブラハム・マズローの欲求5段階説でしょう。
まずは下記に図解にしたものがあるので、ご覧下さい。
上記のように、人は五段階の欲求を持ち、低次元の欲求ほど強いニーズになりやすいと言われています。つまりこれらが満たされなければ、著しくモチベーションが低下するという事です。
極端な例ですが、ライオンが徘徊するオフィスで、睡眠や食事もロクに取れずに、「さぁ一生懸命仕事をして、部長に認められるぞ!」とは思えないでしょう。笑
ですので、下位欲求から順番に満たす事が、モチベーションを引き出すコツだと言えます。もっと言えば、劇的に高いモチベーションを引き出すには、全ての欲求を満たす必要があるという事です。
その方法論を、段階別にご紹介していきましょう。
生理的欲求
まずは人間の最も原始的な欲求である生理的欲求からご説明します。
具体的には、「食べたい、セックスしたい、寝たい」といった基本的なものであり、前述したように最も強烈な欲求だと言えます。
ではこれを会社に置き換えるとどうなるでしょうか?
それは
- 衣食住などのニーズを満たせるだけの最低限の賃金の支払いがされているか?
- 食事や休憩の為の時間の確保がされているか?
- キチンと睡眠が取れるだけの、過剰労働でないシフトになっているか?
といったものになるでしょう。
上記のような最低限の要素が満たせていない会社は、モチベーションうんぬんより、「ビジネスやめちまえ」です。笑
安全欲求
次のレベルは安全欲求です。
これは、「危険や恐怖を回避して、安全な場所にいたい」という欲求です。
これらを会社に置き換えると……
- 身体的安全(負傷したり、病気にかかる心配のない場所)は確保されているか?
- 心理的安全(パワハラ、いじめ等がない環境)は確保されているか?
- 経済的安全(雇用の安定、賃金保障)は確保されているか?
といったものになるでしょう。
生理的欲求と同じように、上記の要素が満たされない会社は、モチベーションどころではありません。
ただし、職場の環境次第では、改善が難しいものもあります。
例えば、私は20歳くらいの頃、パチンコ店で働いた経験がありますが、そこはタバコの煙が充満し、人が密集し、かつ耳が壊れるほどの大音量……と身体的安全で言えば、危険な場所だったと感じます。
とはいえ、これらはお店のサービスの一環ですし、改善するとしても、経営トップ層でなければ着手出来ない問題でしょう。
こういった場合は、出来る部分だけでも改善する事が大切です。例えば心理的安全に関しては、マネージャークラスであれば、少しはコントロール出来るでしょう。
社会的欲求
次のレベルは社会的欲求です。
これは「他人と関わりたい、組織やグループの一員になりたい」といった欲求です。
これらを会社に置き換えると、
- 社員同士がギスギスせずに、円滑なコミュニケーションが行われているか?
- 挨拶や礼節がキチンと行われているだろうか?
- 集団行事や会社以外での集まりによって、社内の連帯感は生み出されているか?
といったものになるでしょう。
基本的には、社内の対人関係を改善していくと考えれば良いでしょう。
どこかに務めた経験があれば、社内に嫌な人が一人いるだけで、モチベーションが「ガクッ」と落ちた経験をした事があるはずです。
これはやる気と密接する非常に重要な問題なのです。
尊厳の欲求
次のレベルにあるのが、尊厳の欲求です。
これは「周りから認められたい、地位や名誉が欲しい」といった欲求です。(余談ですが、私はチヤホヤされたい欲求と呼ぶ)
この尊厳の欲求と、次に紹介する自己実現欲求は、緊急的なニーズではないので、“ほったらかしになりがちな部分”だと言えるでしょう。
だからこそ、基本的なニーズが満たされているのであれば、これらに焦点を当てる事が大切だと、私は思います。
これらを会社に置き換えると……
- 称賛や感謝の言葉を与えているだろうか?
- 社員一人一人に意思決定の権限を与えられているか?
- 適切に、昇格や昇進、肩書きは与えられているだろうか?
といったものになるでしょう。
自己実現欲求
最後のレベルにあるのが、自己実現欲求です。
これは「自分の能力をフルに発揮したい、達成感を勝ち取りたい、自分を成長させたい。」といった欲求です。
これらを会社に置き換えると……
- 世の中の為になるサービスや商品を提供しているだろうか?
- 難しい仕事やプロジェクトも出来うる限り、デリゲード(委任)されているか?
- セミナーや勉強会などで、社員のスキルアップを図っているか?
といったものになるでしょう。
人の捉え方でモチベーションは変わる:X理論とY理論
あなたは自分の部下に対して、どのような印象を持っているでしょうか?
- 怠け者で、指示をしなければ動かない、働くことが嫌いなXさん
- 自分で考えて自主的に仕事を行い、常に成長をし続けるYさん
もし、前者のように捉えているのであれば、実は変わるべきなのは“あなた”なのかもしれません。
こんな風に、管理者やリーダーの立場にある人が、部下の本性をXと捉えるのか、それともYと捉えるのかで、彼らのモチベーションに影響を与えるとした理論が、ダグラス・マグレガーのX理論とY理論です。
X理論、Y理論に基づく人の捉え方の違い
良い働きかけが出来るように、X理論、Y理論に基づく人の捉え方の違いを対比させてみました。
下記の表を見ながら、自分が部下をどちらとして捉えているかを、チェックしてみると良いでしょう。
X理論 | Y理論 |
大抵の人は怠け者で、働く事が嫌いだ。 | 仕事の為に自分にムチを打つのは当たり前で、働く事が好きだ |
人は強制したり、処罰すると脅さなければ動かない | 人は何かに命令されて動くのではなく、自分で考えて行動したい。 |
人はリスクを取るのが嫌いで、挑戦的な仕事をしない | 人は常に成長したいという欲求を持ち、挑戦的な仕事をしたい |
人は金銭や報酬のみによって、モチベーションが引き出される | 人の自主性を尊重し、責任や期待をかける事で、モチベーションが引き出される |
あなたはどちらのタイプだったでしょうか?是非Yタイプのリーダーを目指してください。
X理論、Y理論の人の動かし方の違い
北風と太陽の話…… あるコートを着た旅人がいました。それを見て北風と太陽は、「どちらが彼のコートを脱がせられるか?」という賭けをする事にしました。 北風はビュービューと強風を起こし、無理やりコートを脱がせようとしました。ですが、風を吹いても吹いても、旅人はマントを手で抑えて脱ごうとしません。 疲れた北風は、太陽と交代をしました。 太陽は、日差しや熱を旅人に浴びせました。すると、熱くなった旅人は“自ら”マントを脱いだのです。 |
これは有名な北風と太陽の童話ですが、X理論(北風)とY理論(太陽)の、人の動かし方の違いは、まさにここにあります。
X理論的なアプローチとは、この後に紹介するハーズバーグの言葉を借りれば「KITA(kick in the pants:尻を蹴飛ばせ!)」アプローチだ。
「どうせお前は怠け者だ、だから俺が管理してやる。仕事を一生懸命にやれ、やらなければ尻を蹴とばすぞ!(叱責やクビが待ってるぞ)
逆に頑張れば、ボーナスや手当、身分や昇進を分け与えてやろう。」
確かにこういった脅したり、アメで釣る方法論は、短期的には上手くいくかもしれません……が、長期的にみると最悪だというデータがあらゆる研究で見られます。ヒトラー政権などの独裁的な政治が、いつか崩壊するのと同じ事です。
このような方法論では、人のモチベーションは引き出せません。
「では逆に、Y理論的なアプローチとはどのようなものか?」
というと、太陽がしたように、部下(旅人)が“自ら”動くように仕向けることだと言えます。
デール・カーネギーの著書、“人を動かす”にも同じような言葉が書かれています。
人を動かす秘訣は、この世に、ただひとつしかない。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせること
デール・カーネギー
これはリーダーが、心に刻み込んでおきたい言葉だと言えます。
マイクロマネジメント(X理論的アプローチ)
リクルートが中国、日本、インド、シンガポールの1200人を対象にした調査によると、日本は「上司への満足度」で最低のスコアを記録しています。
その理由について、日本とアメリカを股にかける経営コンサルタント、ロッシェル・カップは、日本人のマイクロマネジメントが原因だと指摘しています。
確かに、日本の多くの職場環境を思い浮かべれば、それはよく見られます。
上司のデスクとピッタリと寄り添った状態で、仕事を常に監視され、やることなすことに「あーだこーだ」と口を出される。上司の言う事を聞けば、「いい子ちゃん」社員となり、聞かなければ、「アイツは生意気だ」となります。
そして極めつけが「報連相」です。
実はホウレンソウは、日本独自の文化であり、自主性を重んじるアメリカなどでは、それに該当する言葉すらありません。
アメリカ人のマネージャーは、部下があまり質問をせずに、自分で考え行動を起こす事をよしとされるからです。
上記のように、日本人のマネージャーは、部下が仕事の進捗を逐一報告し、全てを把握し、全てをコントロール下におきたいと考える傾向が強いと言われます。
そして残念な事に、これは部下の教育だけではなく、子育てなどにも同じ傾向が見られます。
この点については、アメリカ人の思考の方が優れていると言わざるを得ません。(ようするに、日本人は、社員や子供を信頼していないのです。)
※このようなコントロール思考が及ぼすのは、モチベーションの低下だけではなく、自己肯定感までも低下させてしまう事になります。これについては《子供の自己肯定感が低い7つの原因と、8つの最高の教育》という記事をお読み下さい。 |
マクロマネジメント(Y理論的アプローチ)
「ではアメリカ的な思考とはどんなものか?」
というと、マクロマネジメント的なものだと、私は考えています。
- 人それぞれに見合ったレベルの仕事を任せる
- 相手にとって必要な時以外は、アドバイスや口出しは極力しない。
- 部下がいつでも助言を聞ける環境は作る
といったようなイメージです。
アメリカではマネージャーにとって、最も重要なスキルの一つとして言われているのが、デリゲード(委任)というスキルです。
これは「他者を信頼して、仕事を任せる」といった意味あいの言葉です。
例えばアメリカで生まれ、世界に500軒以上展開しているハイアットホテルでは、以下のような理念があるそうです。
顧客とかかわる機会の多い社員が、顧客体験を向上するための意思決定を下すのに一番適している。
ハイアットホテル
上記を裏付けるエピソードを一つ紹介しましょう。
ある日、ハイアットホテルにて…… 子供連れの家族がチェックインをしようとしていました。 ですがホテル側の過失で、予約の処理に問題があり、ホテルの部屋に泊まれる部屋がない状態となっていました。 そこでフロントの従業員は、この問題に対処する間の時間、家族達がフロントで待ちぼうけにならないように、機転を利かせる事にしました。 両親達にはバーの飲み物のチケットを、子供達には、ビデオゲームで遊べるコインを渡したのです。 これによって家族たちは、とても充実した時間を過ごせたそうです。 |
大事なポイントとして、
これらの対応は全てフロントの従業員が“自らの判断で”行動に移している点です。(確かディズニーも同じ企業文化だった気がします。)
もしこれが日本の一般的な企業であれば、「ちょっと上司にかけあってみますね。」という風になっていたでしょう。(そして上司からは勝手な事をするな!と怒鳴られるかもしれません。)
人の自主性を重んじる会社は従業員からも好かれます。
実際、ハイアットは働きたい多国籍ベスト企業の常連ともなっています。
X理論的なマネジメントが効果的な例外パターン
散々とX理論的マネジメントをこきおろしてきた訳ですが、実はこういったアプローチが上手くいく場合もあるとされています。
それは日々同じような作業が求められる、単純作業系の職場の場合です。例えば工場などでの流れ作業などは、その典型的な例と言えるでしょう。
こういった職種に関しては「自分で考える力」は、あまり求められません。
むしろ決まった手順で、決まったルールで、商品を作るべきです。自分のやり方を試されて、不良品を出したり、作業速度が落ちてしまっては困るからです。
もし自身の職場がこういった職場であるならば、下記のX理論的なマネジメントも一考してみる余地はあるでしょう。
X理論(マイクロマネジメント) | Y理論(マクロマネジメント) |
詳しく手順が書かれた作業マニュアルを作り、その通りに実行する | 仕事のやり方については口出しせず、それぞれに任せる |
職場でのルール(例えばヘルメットを被る)を決め、しっかりと守る風土にする | 職場でのルールは最小限に留め、自由な風土にする |
仕事の意思決定権は、上司が全てコントロールする | 仕事の意思決定権は、それをするのに適した人物が行う。 |
モチベーションは二つの要因から:2要因理論
上記に紹介してきた欲求5段階説、X理論、Y理論と同じくらい有名な理論が、アメリカの心理学者、フレデリック・ハーズバーグの二要因理論です。
彼は人間のモチベーションについて研究している内に、それらが動機付け要因と衛生要因からなるという事を突き止めました。
まずは下記のグラフを見てください。
上記を補足すると
- 動機付け要因(満足感に繋がる要因):達成、承認、仕事そのもの、責任、成長
- 衛生要因(不満足感に繋がる要因):会社の方針、監督者との関係、労働条件、給与、同僚との関係
となっています。
※ちなみに何故「達成」などで不満足感を生じた人がいるのか?については、「その職務を全う出来なくて残念だった」といった意見もあるからです。 |
動機付け要因と衛生要因の両方を満たそう
先ほどのグラフを読み取ると、
人は……
- 動機付け要因は、満たされなくても不満足を感じないが、満たされるとやる気が生まれる
- 衛生要因が満たされないと、不満足を感じる。ただし、満たされてもやる気になるわけではない。
という事が分かります。これらは、下記の集計したグラフを見れば一目瞭然でしょう。
例をあげてみましょう。
あなたは会社の福利厚生がキッチリされていて、給料や人間関係が問題なくても、やる気がメキメキと沸いてくるでしょうか?そうではないはずです。あくまでそれは不満足ではないだけです。
逆に自分がとても好きな仕事に就いていれば、やる気は生まれるかもしれません。が、給与がもらえなかったり、上司といつも衝突していれば、ストレスまみれで、不満足を感じるでしょう。
つまり、人のモチベーションを引き出すには、どちらの要因も満たす必要があるという事です。
仕事の充実化
「では、上記を成立させる解決策とはどのようなものか?」
という問いに対して、ハーズバーグの答えが「仕事の充実化」という手法です。具体的には以下のような事を行うと良いでしょう。
3ステップで行う仕事の充実化 |
---|
ステップ1.まず現在行っている仕事の中で無意味なものを抜き出し、それを排除する。 具体的には
などです。 |
ステップ2.衛生要因の中で、改善出来るものがないかチェックする。
|
ステップ3.動機付け要因の中で、より促進出来るものがないかチェックする。
|
目標を利用したモチベーション理論:目標設定理論
目標設定理論は、アメリカの心理学者、エドウィン・A・ロックが提唱した理論です。似たようなものとして、ドラッガーの提唱する目標管理(MBO)などがあります。
どちらも目標を活用して、部下のモチベーションを向上させたり、生産性をアップさせる手法です。
ただ、これらの方法論は、往々にして企業に馴染みません。
「何故でしょうか?」
その理由の一つとして、目標設定のやり方に問題があるという事が考えられます。そこでここでは、その方法論についてご紹介しましょう。
個人と組織の目標をすり合わせよう
私がマネジメントを行う上で、最も重要であり、最もおざなりにされていると感じる事が一つあります。
それは
「個人の目標と企業の目標は一致しているか?」
という事です。究極的に言えば、自分がやりたくもない事に、人はモチベーションなんて沸かないと言えるからです。
そこで、下記の3ステップを踏むことが重要になってきます。
- 部下のやりたい事、部下の個人的な目標を書き出す
- 会社や組織のやりたい事、会社や組織の目標を書き出す
- それらの中心に当たる部分を見つけ、目標として設定する。
という事です。
下記のようなイメージを持つと良いでしょう。
実際的には、まず「部下がどのようなニーズを持っているのか?」を理解する事がとても大切です。
それから、彼らのニーズを満たすように職場の配置、取り組む仕事を提供し、かつそれが会社のニーズを満たすものにすることです。
そうすれば、彼らは自発的にモチベーションを生み出すようになります。(もう尻を蹴飛ばす必要はないという訳です。)
もし、二つのニーズが根本的に噛み合わないのであれば、社員は転職をするべきだし、マネージャー側は人事異動や、クビも視野に入れる必要があります。
勿論、これは言葉では簡単に語れますが、いざ実行するとなると大変な事でしょう。
何故なら実行するにあたって……
- そもそも人を採用する時に、企業と面接者のニーズが一致しているか見極めること
- 社員が自分の個人的な目標を言えるような企業風土を作ること
- 社員の心をくみ取れるような、心理学的な要素がマネージャー側にあること
などが求められるからです。
ただ、これらを全て満たせれば、素晴らしい会社になるのではないでしょうか?
挑戦的な目標にしよう
あなたがボクシングを始めたとして……
いきなり初めてのスパーリングの相手が、マイク・タイソンだったらどう感じるでしょうか?きっと「おい、殺されるよ、勝てる訳ないだろ」と不安で仕方がない状態になるでしょう。
逆に、小学一年生の子供だったらどうでしょうか?「いやいや本気で戦えないし」と感じるでしょう。
では一番の本気が出せるのはどんな相手か?というと、自分とキャリアや体格が同じくらいの、勝てるか勝てないかくらいの相手でしょう。
目標設定もこれと同じです。届くか届かないかのギリギリの挑戦的な目標にする事が、その人のパフォーマンスを最大限引き出します。
これは、フロー理論で著名なミハイ・チクセントミハイの研究からも分かります。以下の画像を見てください。
上記のように、人は自分の能力と挑戦のレベルがピッタリな時に、最高の力を発揮出来るようになっているのです。目標を立てる時は、これを参考にすると良いでしょう。
※フローとは、自分が物事に没頭している状態であり、高いモチベーションを持ち、最大パフォーマンスを出せる状態を指します。 |
具体的な目標にする
例えばあなたが営業の仕事をしていたとしましょう。
そんな時、以下のどちらの目標の方が、良い成績を出せると感じるでしょうか?
- 出来るだけ営業を頑張るぞ!
- 一日3件アポイントメントを取るぞ!
答え合わせをするまでもなく、後者の方が、どんな行動をすればいいかが明確で、結果に繋がりやすい目標だと言えます。
ですが実際の職場では、これに反した、下記のような抽象的な言葉が飛び交います。
- 「良く考えて行動しろ!」
- 「出来るだけコストを削減するんだ!」
- 「企業風土を改善しよう」
これらはよく耳にしますが、こういった指示や目標では、「具体的に何をすればいいかが分かりません。ですから具体的な目標にする事が大切なのです。
また具体的にするには、数字を入れた目標にすると良いでしょう。(例;年間のコストを100万円、削減しよう……等)
※より詳しく、具体的な目標にするコツが掴みたければ、《夢の実現には目的と目標が必要、でも2つの違いを知ってる?》の記事で、より詳しくご紹介しているので、見てみると良いでしょう。 |
顧客満足と会社の利益の二点から考える。
会社にとって、利益は酸素のようなもの。ですから、ビジネス上の目標を立てる時、
- 売上目標
- 契約件数
- アポイント数
というような、利益に直結した目標を立てがちです。ですが、これだけでは下記のようになりがちです。
「売り上げのノルマ達成しなければ、部長に怒られる。とりあえず商品を騙してでも顧客に売りつけてやろう。ノルマを達成してしまえば、サボっててもOKだ。」
こんな風にならない為には、会社の利益的な目標の他に、もう一つ目標が必要です。
それは「顧客満足」という視点の目標です。
例えば
- 既存の顧客へ、アフターフォローの電話を入れる
- お客さんにとって、本当に必要な商品だけを販売する
といった目標です。顧客満足視点の目標は抽象的になりがちですが、こういった目標を考えておく事で、顧客を騙して売り上げをあげようというような考えは無くなるはずです。
モチベーションは自己選択から:認知的評価理論
ある裁判のワンシーンにて…… 検察「彼は至近距離から被害者を撃っていた、殺意は明らかだ!」 弁護士「いや、当時の彼は精神錯乱状態だった、それに被害者に恐怖を感じていた。だから威嚇射撃のつもりだったんだ、殺意は無かった!」 |
ここでの論点は「加害者がピストルを自分の意思でひいたのかどうか?」です。
何故ならこの違いは、刑期に大きな違いをもたらすからです。(だから精神錯乱者のフリをする犯罪者もいるくらいだ。)
わざわざこんな話を持ち出したのは、この「自己選択をしているかどうか?」は、刑期だけではなく、モチベーションを語る上でも欠かせない要素の一つだからです。
つまり人は
- 外発的動機(外部によってモチベーションを与えられるのか?)
- 内発的動機(自分の意思によってモチベーションを得るのか?)
のどちらによって、より強いモチベーションを得るのでしょうか?
ここでは、そういった研究をしてきたアメリカの心理学者、エドワード・デシの認知的評価理論をご紹介しましょう。
外発的動機と内発的動機の違い
まずは外発的動機と、内発的動機の違いを表にしてみたので、見てください。
外発的動機 | 内発的動機 |
お金が欲しい、地位や名誉が欲しい、人に褒められたい・叱られたくない、といった外側の動機 | 自分を成長させたい、最高のパフォーマンスを発揮したい、素晴らしいものを生み出したいといった内なる動機 |
短期的にはモチベーションが得られるが、その後失われる | 長期的に持続するモチベーションが得られる |
クリエイティビティが低い | クリエイティビティが高い |
外発的動機は…… アメ(報酬)とムチ(罰)によって動機づけることで引き出されます。
|
内発的動機は……
の三つを満たす事によって、引き出されるとされています。 |
二つの違いがなんとなく掴めたでしょうか?
当然、私達が目指したいのは、内発的動機づけのアプローチだと言えます。これは自己実現的であり、Y理論的であるとも言えます。
では、引き出す為の方法論を、より詳しくご紹介していきましょう。
報酬や罰でモチベーションを引き出そうとしないこと
「良い子にしているから○○してあげるよ。」
よく聞くセリフですが、この“良い子”は余計です。そうすれば子供はこの誉め言葉(報酬)欲しさに、無理に良い子を振る舞うようになるからです。
そして人は報酬欲しさに行動すると、報酬が無ければその行動を起こさなくなります。つまり、親のいない所で悪い子になるのです。笑
そんな風に、エドワード・デシ達は様々な研究から、金銭や報酬によって動機づけを行うと、内発的動機付けが失われているとしています。
会社で言えば、「お金が欲しいんだろ?なら、一生懸命働け、会社に尽くせ」的な事を言うマネージャーがいますが、これは最低の教育だと言えます。
そんな風に金銭や報酬で、部下をコントロールしようとすると、人は仕事に対するやりがいを無くしていき、より高い給与を出している会社に転職する……という事です。
ですから、出来るだけ金銭や報酬から意識をそらせてあげる努力が大切なのです。
- その仕事のやりがいは何か?
- 世の中にどういった貢献をしているのか?
- 部下の成長にどのような影響を及ぼすのか?
こういった部分を伝え続ける事が大切なのです。
「何故金銭や報酬から意識をそらす事が大切なのか?」 その疑問に答える研究結果などを知りたい方は、《あなたの未来を変えるモチベーション3.0の要約と応用》の記事で書いたので、こちらも読まれると理解が深まるでしょう。 |
有能感を満たしてあげる
「私は仕事が出来ない人間だ」などと考えていては、モチベーションどころではありませんよね?
ですから、「自分は仕事が出来る人間なんだ!」と部下に勘違いさせる事はとても重要だと言えます。(調子に乗らせるのとは、またちょっと違いますが。)
その為の方法論は以下の通りです。
- ノンバーバル(非言語)コミュニケーションを大切にする
- チョイスアプローチで会話する
- ポジティブな面を8回褒め、ネガティブな面を2回注意する
是非実践し、部下のやる気を高めてもらえればと思います。
※チョイスアプローチ会話法については《子供の自己肯定感が低い7つの原因と、8つの最高の教育》で記述しているので、こちらをお読みいただくと良いでしょう。またここでご紹介している方法論は、自律性や有能感、関係性を満たす教育法だと言えます。 |
モチベーション理論の実践、17のチェックリスト
冒頭でもお伝えした通り、どれだけ理論を学んでも実践しなければ、何の意味もありません。大切なのは、一つでも行動を変えることだと、私は思っています。
そこで、最後に実践する為の17つのチェックリストを作りました。これらの項の中で、自分が改善出来る部分に一つ一つ取り組んでみて下さい。
モチベーション理論の実践、17のチェックリスト |
---|
世の中の為になるサービスや商品を提供しているだろうか? |
自社の仕事が、世の中へどう貢献しているかを日々伝えているか? |
適切に、昇格や昇進、肩書きは与えられているだろうか? |
過剰な残業や、過酷な労働環境などで、従業員が過度なストレスを感じる環境ではないか? |
身体的安全(負傷したり、病気にかかる心配のない場所)は確保されているか? |
経済的安全(雇用の安定、賃金保障)は確保されているか? |
心理的安全(パワハラ、いじめ等がない環境)は確保されているか? |
集団行事や会社以外での集まりによって、社内の連帯感は生み出されているか? |
挨拶をしたり、明るいコミュニケーションが行われる環境だろうか? |
報酬や罰でモチベーションを引き出そうとしていないか? |
セミナーや勉強会などで、社員のスキルアップを図っているか? |
一人ひとりの仕事の範囲を決め、部下を信頼して、責任の重い仕事もデリゲード(委任)出来ているか? |
部下は、常に挑戦的な仕事に取り組んでいるだろうか?(それが出来る環境だろうか?) |
個人の目標と組織の目標は一致しているだろうか? |
部下に、過剰な報連相を求めたり、必要以上に口出しやアドバイスをしていないか? |
部下の仕事を褒めたり、肯定的なフィードバックは与えているだろうか? |
ノンバーバル(非言語)コミュニケーションを大切にしているか? |
是非、上記のリストを実行し、社員がイキイキと働き、素晴らしい商品やサービスを生み出す職場を、あなたが作り始めて下さい。
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