
あの日、ふと彼女と目が合った瞬間に起きたこと…
「ほら、空を見てよ。スッゲー星が見えるよ。」
「ほんとだー!綺麗ー!」
そんな話をしながら俺とリエ(仮名)は、夜道を歩いていた。リエは金髪で派手な格好とは裏腹に、あまり自己主張をしない控えめな性格の女性だった。
俺は彼女のそんな所が好きだった。
当時は二人ともバンドマンで、その日はお互いの先輩のバンドのライブを見に行った帰りだった。そしてライブの後、彼女を自宅まで送っていた。
恋の予感…?
多分、彼女も俺に好意を持っていたのだろう。
言葉には出来ない、お互いのそんな空気感を感じたからだ。そして俺は「今日、気持ちを打ち明けなきゃ」って思っていた。
だが上手く言葉には出来ず、気づけば彼女の自宅についていた。「あぁ俺のいくじなし…」なんて思っていたら、ふと彼女と目が合った。そして、少しの静寂が訪れた。
瞳には、磁石のように互いを引きつける力があるのだろうか?
そんな錯覚すら覚えるほどだった。
もちろん台本があった訳じゃない。だが目と目があった瞬間、まるでドラマのワンシーンかのように、自然とお互いが顔を寄せ合いキスをした。
そういえばいつもこうだったかもしれない。過去の恋愛を思い返してみても、初めてキスをする時には、二人は無言になり見つめあう。
それは映画やドラマの世界でも変わらない。きっと世界共通言語として、キスのサインなのだろう。
瞳には、言葉以上にモノを語る瞬間がある
今回の記事では、そんな瞳の秘密について明かしていこう。
具体的には
- 目が合う4つの心理/目をそらす4つの心理
- 目を見て話す時の3つのコツ
という流れでご紹介する。
もし、あなたが恋人とロマンティックな時間を過ごしたいなら、そしてビジネスで成功を収めたいなら、この瞳の力は強力な武器となるだろう。
1.目が合う4つの心理/目をそらす4つの心理
キスのサインだけではない。ほとんどの人は意識しないが、俺たちは瞳を使って、驚くほど様々な事を行っている。
実は瞳には
- 会話をスタートさせる合図
- 話す・聞くの発言権を交代する合図
- 最大の関心事を示す合図
- 相手に感情や意思を伝えるための合図
といった役割がある。
この為に俺たちは誰かと目を合わせたり、そらせたりするのだ。
ここではそんな瞳の機能について、より身近な例をあげながら解説していこう。
1-1.目が合う心理/そらす心理-会話のスタート
こんな経験は無いだろうか?
あなたが服屋で買い物をしている。特に何も買う予定は無く、ブラブラと歩き服を眺める。そしてキョロキョロと周りを見ると、ふと店員と目が合う。
すると店員がツカツカと歩いてくる。そして「お探しはアウターですか?インナーですか?」なんて決まったセリフを耳にする。
こうした対応を受けて「ウザいなぁ…」なんて思った事があるのは俺だけじゃないはずだ。(幸いこういう接客は、グッと減ったような気がするが。)
服屋に限らず、あらゆる場所で同じような事が行われている。例えばナンパや街頭の募金集め、電気屋や楽器屋、ホテルやレストラン…という場所で。
もし、あなたが彼らと会話をしたくないのであれば、一つアドバイスがある。それは「彼らと目を合わせない」ようにすればいい。
何故なら、
「目が合うのは会話のスタートの合図」
になるだからだ。
だから会話が始まる前に、あなたに目線を送ってくる人がいたら、それは「あなたと会話をしたい」という心理を持っている可能性が高いだろう。
逆に目線を合わせようとしないのであれば、それはあなたと会話をしたくないのだろう。
これを自分の方で利用する手もある。
つまりあなたが会話をしたい人、例えば意中の相手や尊敬している人とお近づきになりたいなら、目線を合わすように心がければいい。
そして目が合ったらすかさず話かけるのだ。こうすれば、スムーズに会話を始める事が出来るだろう。
1-2.目が合う心理/そらす心理-発言権の交代
会話が始まれば、アイコンタクトは発言権の交代としての機能を持つ。
実は人には
- 自分が話をしている時は、相手と目を合わさない
- 自分が話を終える時に、相手と目を合わす
- 相手の話を聞いている時に、相手の目を見る
という傾向がある。(もちろん、いつでもそうだという訳ではないが。)
つまり
「目が合うのは発言権を交代する合図」
だと言えるのだ。
これらは地位が高い・低い、男・女によっても違いがあるが、基本的にはこうした傾向があると覚えておこう。
これをコミュニケーションに活用するのであれば
- 自分が話をしていて、相手に邪魔されたくなければ、目を合わせないこと
- 自分が話を終えたい時は、相手と目を合わせて黙る
- 相手が話をしていて、自分が喋りたい時は目線を合わす
という事になるだろう。
だが俺も試してみた事があるが、これらを意識的に活用するのは難しい。
実際は勝手に無意識がやってくれる事だ。だから知識として知っておく程度で、あまり気にしなくていいと思う。(もちろん、良い活用方法があれば、すぐに俺にメッセージをくれると嬉しい。)
1-3.目が合う心理/そらす心理-最大の関心事
以前、俺が兄貴の子供二人とババ抜きをした時の話だ。
初めは普通にプレイをしていたのだが、俺は途中から全くjokerを引かなくなった。というのも、彼らの目は必ずjokerの方を向いていて、俺にはその在り処が分かったからだ。
そして俺が
「あ、ここにjokerがあるんじゃないの?それともこれかな?」
「隠しても無駄だよ、俺にはカードが透けて見えるから…」
なんて揺さぶりをかけると、よりその傾向は顕著になった。(大人げないと言われそうだが、手加減するのは嫌いだ。)
ここから分かる事が一つある。
それは
「人は最大の関心事の方に視線を向ける傾向がある」
という事だ。これは会話中にも起こるし、会話をしていない時にも起こる。
日常で無意識に行われる、こうした目線の動きに、人の本心が隠れている可能性は高い。
例えば
- 会話中にチラッと別の人を見るのなら、「自分ではなく、その人と会話をしたい」
- 時計をチラチラ見ていたら「早く帰りたいなぁ」
といった心理を示しているのかもしれない。
逆に、あなたが誰かとよく目が合うと感じているのなら、それはその人が、あなたに何らかの関心を持っている可能性が高い。
ただそれが好意なのか、興味なのか、敵意なのか、仕事の為の監視なのか…といった事までは分からない。
例えば
- 「なんだか、あの人の事が気になるな…」
- 「あの人、変なカッコウをしてるわね」
- 「あの男には絶対負けないぞ」
- 「アイツ、仕事をさぼっていないだろうな?」
という風に、様々な理由から見つめている可能性がある。見つめるのは好意の可能性が高いが、早計に決めつけるのは危険だという事だ。
特に女性の場合に多いが、自分の気持ちを隠す為に、相手をあまり見ない人もいる。これは「気持ちが悟られて、避けられるのが怖い」という恐怖からだ。
なので相手の目線だけではなく、様々な他のボディーランゲージや表情からも、情報を収集する必要がある。そんな風に総合的に見て、相手の心情を判断すると、より相手の本音が分かるだろう。
※相手の心理を正しく理解する為には、深い観察能力がいる。それらを身に着けるには《シャーロックホームズ級の観察力を身につける9つのポイント》という記事を読むと良いだろう。 |
1-4.目が合う心理/そらす心理-感情の伝達手段
サッカーやバスケットなどのスポーツをしている時、お互いがアイコンタクトを取って
- 「俺にパスをくれ!」
- 「俺がシュートをする!」
といったメッセージを送りあった経験はないだろうか?
何故なら言葉でそれを伝達すれば、相手にそれがバレてしまうからだ。
冒頭のストーリーで紹介した俺とリエは、お互いの「好き」という言いだしにくい気持ちを、瞳を使って表現していたのだろう。
そんな風に
「目が合うのはなんらかの情報を伝達するため」
という機能もある。
ただ、瞳を使って細かな情報を伝達するのは難しい。例えば目線だけで道案内をしたり、数学の方程式を教えたりするのは、困難を極めるだろう。
だが、感情を伝達する手段として目は非常に優れている。それは相手の心理を読み取ったり、相手の心理を動かす上で、非常に役立つだろう。
例えば
- 喜び・好意の瞳であれば「もっと、あなたと話をしたい」
- 不安・恐怖の瞳であれば「あなたから逃げたい」
- 怒りの瞳であれば「あなたと私の間には問題がある。」
- 悲しみの瞳であれば「助けて欲しい、慰めて欲しい。」
という風なメッセージを、相手の無意識に刷り込む事が出来る。(瞳に感情を込める方法については後述)
相手に、その隠したメッセージを感じさせれば、相手の行動を変化させる事も出来る。冒頭の俺とリエがその証拠だ。
また、目線を合わさないのは「もうあなたとは話をしたくない」という拒絶のサインの可能性が高い。
ただ前述したように、女性の場合であれば、「恥ずかしい」という好意を隠している事もあるので、それらは他の言語・非言語のサインと一緒に見極める事が大切だろう。
2.目を見て話すときに使える3つの口説きの極意
ここまでで、目が合う/目をそらす心理には、
- 会話のスタートの合図
- 発言権を交代する合図
- 最大の関心事/無関心の合図
- 感情の伝達の合図
といった役割がある事をお伝えした。
だがそれらも、相手に「見られている」と意識をしてもらわなければ意味がない。また、好意を発信したいのに、敵意が伝わってしまったとしたら、本末転倒だろう。
そこでここからはこの問題を解決する
「相手と目を合わせる時の3つのコツ」
をご紹介していこう。
具体的には
- 見つめる場所
- 見つめる長さ
- 見つめる時の感情
の三つになる。
あなたがこれらの要素を意識するかどうかで、コミュニケーションの質は大きく変わるだろう。
それでは詳しく説明していこう。
2-1.目を見て話すときのコツ-見つめる場所
相手の目を見る時に、まず気をつけるべきポイントは、目を見る場所だ。ちゃんと相手が「見られている」と認識しなければ、どんなアイコンタクトにも意味がないだろう。
また目線が落ち着かず、キョロキョロしていては、「不安や自信の無さ」というメッセージを発信してしまう。それはコミュニケーションにおいて大きなマイナスになってしまう。
だからこそ、バシッと相手の一点を見つめる必要がある。
ただ相手の目をのぞき込むと、自分の瞳がグラグラしてしまいやすい。そこでお勧めなのが、眉間を見る事だ。
下記の画像を見てほしい。
これから人と目を合わせる時は、この上記の画像で示している眉間のあたりを見てほしい。
そうすれば、きちんと相手の方を向いているように見えるし、こちらの目も揺れない。
とはいえ「じーっ」と見ていると、気持ち悪がられてしまう。そこで時おり視線を外す必要があるが、この時にもコツがある。
それは
「縦に外す」
ということ。
というのも、横に目線を外すと否定的な印象を与えるからだ。
例えば「それは違います」と言ってみてほしい。すると自然に首を横に振っていないだろうか?
こうした否定のサインが出てしまうと、相手は無意識の内にあなたとの会話を楽しめなくなる。
逆に縦に首を振ると、肯定のサインとなる。それはお互いをリラックスさせ、良いコミュニケーションに繋がりやすくなる。
だからこそ、視線は縦に外すのが好ましいと言えるだろう。
2-2.目を見て話すときのコツ-見つめる長さ
誰もが何となく気付いている事かもしれないが、「見つめる回数や、見つめる時間の長さ」によって、相手に与える印象値は大きく変わる。
具体的には、以下の表のようになる。
見つめる時間の長さによる、心理の変化
|
こうしたデータを踏まえると、相手とは出来るだけ目線を合わせながら会話をした方が、コミュニケーション上有利に働くと言える。
とはいえ、やはり見つめすぎには注意が必要だろう。
「なにこの人…ずっと見てる…怖っ」なんて思われかねない。なので時々、2、3秒程度目をそらして、また相手を見つめるようにしよう。
「では、相手を見つめる時間の長さは、どれくらいが理想か?」
というと、日本大学芸術学部教授の佐藤綾子さんは、オバマ大統領の就任演説や、安倍首相のオリンピック招致のプレゼンを引き合いに出しながら、こう語っている。
営業のつかみは「32秒/1分間」のアイコンタクト
つまり一分間に32秒なので、会話の50%くらいを目安にすると良いと言えるだろう。
ただ一つ注意点として、上記のデータは交渉やプレゼンの理想であって、状況によって少し調節が必要かもしれない。
例えば、あなたが聴衆の一人として、ミュージシャンをどれだけ長く見続けても、それは問題ないだろう。またラブラブな恋人同士であれば、よりお互いを見つめあう時間が増えるはずだ。
だが逆に、電車に乗っている知らない女の子をまじまじと見つめたら、相手にとって恐怖以外なにものでもないだろう。
つまりアイコンタクトも、時と場合によって理想が変わってくるのだ。だからこそ、基本の50%を保ちながらも、相手の反応や状況によって、調節するようにすると良いだろう。
2-3.目を見て話す時のコツ-見つめる時の感情
- 「色目をつかう」
- 「目を丸くする」
- 「白い目で見る」
- 「目で笑う」
というように、目は様々な感情を伝達する事が出来る。
そして神経科学の分野などで分かってきた事だが、感情は瞳を通してインフルエンザウイルスのように伝染するのだ。
だからこそ相手を見つめる時、どんな感情を持っているかが非常に重要だ。
ただ、感情を込める為に「えーと眼輪筋と口角を動かして…」なんて筋肉を自由自在に動かすのは、俳優などの訓練を受けた人でも難しいだろう。
それに俳優達も、ある別の方法を使って、自分の表情をコントロールしていると言われている。
それは
「メソッド演技法」
と呼ばれるものだ。
テレビ番組などで、「どうやってウソ泣きをしているの?」と聞かれた女優が、「昔の悲しい記憶を思い出しているんです。」などと言っているのを、聞いた事は無いだろうか?
あれがまさにメソッド演技法で、具体的な手順としては以下の通りだ。
メソッド演技法
|
こうすることで、人は自然と表情に感情が表れるようになる。
そして繰り返すが、感情は伝染する。
映画や小説などを見て、物語の中の恋人との別れに泣いたり、悪役にムカついたりした事はないだろうか?これは主人公の気持ちに同調しているからだ。
これを上手く利用すれば、相手に一目ぼれを起こしたり、一瞬で信用されたりする事も出来る。
例えば
- 恋人から愛された過去の記憶を想起して会話する→相手にラブラブな雰囲気を伝染させる
- ビジネスで成功したり、何かを達成した幸せな記憶を想起する→場を明るく、楽しくさせられる
という事だ。
その上このメソッド演技法は、自分にポジティブな感情を想起させることで、相手だけではなく、自身自身も心地よくさせる事が出来る。つまりモチベーションアップ法としても有効だ。
是非、活用して欲しい。
※またこのメソッド演技法は、サブモダリティ・チェンジの技術を組み合わせると、より強力になる。これについては《3ステップ!モチベーションを維持する究極の自己洗脳技術》という記事でご紹介しているので、是非併せてお読み下さい。 |
自然に目が合う瞬間を作り出すために…
いかがだろうか?
最後にこの記事の内容を使いこなせるように、以下のような簡単な練習帳を用意した。まずは、会社や友人関係の場でこうした訓練を積んでほしい。
アイコンタクトの練習帳 |
---|
1.会話のスタートを切る練習:意中の相手や尊敬している人と、目線を送り、目が合ったらすぐさま会話する。 |
2.見つめる場所の練習:眉間の辺りを見つめる、視線をそらす時は縦に外す |
3.見つめる長さの練習:会話全体の50%を基本に、状況によって調節する |
4.見つめる時の感情:自分の過去のポジティブな経験を思い出す→その感情を保ったまま会話をする |
実際にやってみると、初めはぎこちなく、非常に難しいと感じるだろう。だが続ける内に一つ一つが、無意識に出来るようになっていくはずだ。
これは泳ぎなどを覚えるのと同じ要領だ。泳ぎも「息を吸って、体を水面に浮かせ、足をバタバタさせ、腕を動かし…」という風に、一つ一つを意識して習得した末に、自然に泳げるようになる。
そんな風に「今日は眉間を見る練習、今日は50%の時間を見つめる…」などと、ルールを決めながら、一つずつ習得すれば自然と出来るようになるだろう。
こうして、あなたがこのアイコンタクトの技術を身に着ければ、それはあなたの恋愛やビジネスの成功を掴む上での、大きな力となってくれるはずだ。
コメント